痛風を防ぐには?
監修・執筆
監修:医師 吉野 初音(アムス丸の内パレスビルクリニック勤務医)
執筆:保健師 桐原 沙也佳(アムス丸の内パレスビルクリニック健康増進科)
はじめに
前回のコラムでは、痛風になりやすい人のチェック項目について掲載しましたが、皆さんはいくつ当てはまりましたか?
□男性である
□太っている(BMI25以上)
□肉料理をよく食べる
□魚や動物の内臓が好き
□干物類・納豆・しらすをよく食べる
□間食の習慣がある
□お酒(特にビールや日本酒)をたくさん飲む
□ジュース類・炭酸飲料水をよく飲む
□運動習慣がない
□ストレスを感じることが多い
□生活が不規則
□激しいスポーツを好む
□血縁に痛風の人がいる
この項目はいずれも痛風になる要因です。
7つ以上当てはまる方は、痛風のリスクが高いため生活習慣の改善が必要です。
今回は痛風を予防する方法についてご説明します。
痛風を防ぐポイント1.肥満を解消する
肥満は尿酸の排泄を減少させ、尿酸の濃度が高くなります。まずは自分の肥満度をチェックしてみましょう。肥満度はBMIという指数で表すことができ、以下の式で求めることができます。
BMI (肥満度)を求める式
BMI=体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)
BMI(肥満度)とその判定
BMI:18.5未満 判定:低体重
BMI:18.5以上25.0未満 判定:普通体重
BMI:25.0以上30.0未満 判定:肥満(1度)
BMI:30.0以上35.0未満 判定:肥満(2度)
BMI:35.0以上40.0未満 判定:肥満(3度)
BMI:40.0以上 判定:肥満(4度)
例えば、身長165㎝、体重61㎏の人は、BMI=61÷1.65÷1.65=22.40で普通体重です。
肥満だった方は、無理なく減量していきましょう。
体重は体重計に乗らなくなった頃から右上がりに増えていくと言われていますので、まずは体重計に乗る習慣をつけましょう。
体重を測定するタイミングは、朝起きて食事前にトイレに行った後がおすすめです。食事の影響をあまり受けず測定することができます。
夕食後も測定できるといいですが、まずは1日1回でもかまいません。そして、食べた後は体重が1㎏以上増えないようにすることもポイントです。
測定後はスマホアプリなどを活用し、日々の記録をグラフにして可視化するとよいでしょう。なぜ増えたのか?なぜ減ったのか?振り返ることで減量の効果は高まります。
体重測定のポイント
・朝起きてトイレに行った後と夕食を食べた後(または就寝前)
・服装はできるだけ同じような服装で測定する
・体重計は100g単位のデジタルのもので測定する
痛風を防ぐポイント2.食生活を見直す
栄養バランスのよい食事をとる
毎食、定食のような形を意識して、主食・主菜・副菜の料理をそろえるとバランスが整います。肉や動物の内臓、干物は控えめにし、野菜や海藻類はたっぷり食べるようにしましょう。
野菜や海藻類は、尿酸が溶けやすく排泄されやすくし、低カロリーで肥満解消にも役立ちます。
栄養バランスの詳細については、食事のコラムを参照してください。(健康寿命を延ばすための食卓とは)
また、乳製品を適量摂ることで、尿酸値を下げる効果があると言われています。牛乳であればコップ(200ml)1杯、ヨーグルトは100~200gを目安にとるようにしましょう。肥満が気になる方は低脂肪のものでもかまいません。
プリン体の多い食品の食べ過ぎに注意
プリン体の摂取量の目安は、1日400㎎です。プリン体を多く含む食品はなるべく避けるようにして、ときどき食べる程度に控えましょう。
しかし、プリン体は全体の約80%が体内で作られ、食べ物から体内に入るのは20%程度ですので、必要以上に神経質にならなくても大丈夫です。
食品のプリン体含有量がきわめて多い食べ物(100gあたり300㎎以上)
・鶏レバー
・真いわし干物
・いさき白子
・あんこう肝酒蒸し
・かつお節
・煮干し
・干ししいたけ
食品のプリン体含有量が多い食べ物(100gあたり200~300㎎)
・豚レバー
・牛レバー
・かつお
・真いわし
・大正えび
・真あじ干物
・さんま干物
参考資料 野々村 瑞穂他.「知っておきたい食生活支援のコツとポイント」.第一出版
バランスの整った食事を摂ることやプリン体の制限だけでなく、遅い時間の飲食を控え、早食いや食べ過ぎをやめて、ゆっくりよく噛んで腹八分目を心掛けましょう。
痛風を防ぐポイント3.適度な運動をする
高負荷運動よりも有酸素運動
尿酸値が高い方には、ベンチプレスのような高負荷の筋トレや、短距離走など激しい運動はおすすめできません。激しい運動は尿酸値を上昇させる原因になります。
一方、ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動は、尿酸値を下げるほかにも、肥満の解消やストレス解消の効果が期待できます。
運動時間について
運動不足と分かってはいるけど、なかなか運動の一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
運動する時間は細切れでも同じ効果が得られると言われています。
普段の生活のスキマ時間に身体を動かすことを続ければ、“ちりも積もれば山となる”で運動量を増やせます。まずは今よりプラス10分、体を動かすことを意識してみましょう。
プラス10分の運動を1年間継続すると、1.5~2.0㎏減の減量効果が期待できます。
詳細については運動のコラムをご参照ください。(テレワーク(在宅勤務)による運動不足を解消しましょう)
痛風を防ぐポイント4.アルコールは適量にする
アルコールは体内で分解される際に尿酸をつくり、体外への尿酸の排泄を妨げます。
アルコール類を選ぶ時は、プリン体と純アルコール量の2つのことを意識しましょう。
プリン体について
まずプリン体ですが、ビールはプリン体が特に多く含まれていますので、飲みすぎには注意しましょう。
100mlあたりのプリン体含有量
・地ビール:4.6㎎~16.7㎎
・ビール:3.3㎎~8.4㎎
・日本酒:1.2㎎~1.5㎎
・ワイン:0.4㎎~1.6㎎
・発泡酒:0.1㎎~3.9㎎
・ブランデー:0.4㎎
・ウイスキー:0.1㎎
・焼酎(25%):0㎎
参考資料 野々村 瑞穂他.「知っておきたい食生活支援のコツとポイント」.第一出版
純アルコール量について
もう一つの純アルコール量ですが、肝臓に負担をかけないためにも、男性は20g以下、女性は10g以下を心掛けましょう。
純アルコール量の求め方
純アルコール量(g)=飲酒量(ml)×アルコール度数÷100×0.8
例えば、アルコール度数5%のビールを500ml飲んだ場合、500(ml)×[5度÷100]×0.8=20gです。これは男性は適量、女性は10gオーバーという数字です。
アルコールは適量を心がける
プリン体の多いビールを控え、焼酎やウイスキーに変えればいいと思う人が多いのですが、プリン体を含んでいなくても、アルコール自体に尿酸を上げる働きがありますので、種類に関係なく適量を心がけましょう。
また、飲酒時のおつまみは肉類や魚の内臓などプリン体が多いものが好まれがちで、さらに、飲酒は食欲を増進させ飲みすぎ・食べ過ぎで肥満へと繋がりやすくなります。
おつまみは、野菜スティック・トマトスライス・海藻サラダ・おでん・お浸し・冷奴や湯豆腐などを選ぶようにしましょう。
痛風を防ぐポイント5.水分を十分にとる
尿酸は尿から排泄されるので、水分を十分にとって尿量を増やすようにしましょう。
1日2Lを目標にアルコールやジュース・清涼飲料水ではなく、水やお茶でこまめにとりましょう(腎臓や心臓などに疾患がある場合は、かかりつけ医の指示に従ってください)。
痛風を防ぐポイント6.ストレスは早めに解消する
ストレスは尿酸の合成を高め、尿酸の排泄を悪化させるほか、痛風発作が起こりやすくなると言われています。
ストレスを発散しようと、暴飲暴食や過度な飲酒をしてしまう方も多いのではないでしょうか。自分ではストレスを発散しようと行っていても、暴飲暴食や過度な飲酒は体調不良にもつながるおそれがあります。
身体を動かして汗をかく、大きな声で歌う、ゆっくり入浴するなど、自分なりのストレス解消法を身につけ、早めに対応しましょう。
おわりに
高尿酸血症や痛風の予防は、プリン体のみを意識するのではなく、さまざまな面からの生活習慣の改善が大切です。
人間ドックで再検査や要治療となった方は、放置せずに病院を受診しましょう。また現在治療中の方も、症状がないからと自己判断で治療を中断せず、適切な治療を受けましょう。