コラム

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2023.07.26

4.その他

熱中症予防のために

Contents目次

監修・執筆

監修:医師 加藤 美貴(アムスランドマーククリニック勤務医)
執筆:保健師 渋谷 聖子(アムスランドマーククリニック健康増進科)

はじめに

前回は、熱中症のメカニズムや熱中症になりやすい人について説明しましたが、今回は、予防策と熱中症が疑われる場合の対処方法についてご説明します。

熱中症の予防策について

熱中症の予防策は大きく分けて2つで、暑さ対策とこまめな水分補給です。

ここでは、それぞれのポイントを紹介します。

なお、体を冷やす際は、首筋や脇の下、太ももの付け根など、太い血管が通っている部位に冷たいものを当てると、効果的に体温を下げることができます。

暑さ対策

屋外でのポイント

・日傘や帽子を活用する。

・服は涼しい綿や麻の素材がおすすめ。

・日陰や木陰でこまめに休憩し、涼むようにする。

・天気予報をチェックし、気温や湿度が高い日は、できるだけ外出を控える。

・ネッククーラーや保冷剤などの冷却グッズを活用する(凍らせたペットボトルにタオルを巻く方法でも代用可能)。

屋内でのポイント

・扇風機、サーキュレーターやエアコンを上手に活用し、室温と湿度を調整する。

・湿度が65%を超える場合は、エアコンの除湿機能を使って湿度を下げる(湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温を下げるのが難しくなるため)。

・エアコンと扇風機やサーキュレーターを同時に使うと効果的(室温25~28℃、湿度40~60%が目安)。

・すだれやカーテンを活用し、直射日光を遮る(室温の上昇を抑えることが可能)。

こまめに水分を補給する

水分補給のポイント

・喉が渇く前に、こまめに水分を摂る(喉が渇いた時点では既に脱水の兆候で、食事以外には、1.2L/日、コップ6杯分が目安)。

・起床後や入浴前後にも、意識して水分を摂る。

・外出時は、水やノンカフェインのお茶などを持ち歩き、こまめに水分補給を行う(アルコールやカフェインを含む飲料、糖分の多い飲料は利尿作用があるため、注意が必要)

水分補給ができているのか気づくためのポイント

自分では気づかなくても、水分補給が十分できておらず、脱水症になっている場合があります。いくつかの確認方法がありますので、覚えておくと良いでしょう。

尿の色の確認する 脱水が進むと、尿量が減少し、尿の色が濃くなる傾向があります。正常な状態の尿の色は薄い黄色であり、体内の水分量が少なくなると尿の黄色味は濃くなり、オレンジ色から茶褐色に変化します。
親指の爪を逆の指でつまんでみる つまんだ指を離した時に、白かった爪の色が3秒以内にピンク色に戻らない場合や、白いままである場合は、脱水症が進んでいる可能性があります。
皮膚の弾力性を確認する 手の甲の皮膚をつまんで離した時に、3秒以上もとの状態に戻らない場合は、脱水症が進んでいる可能性があります。
舌や口唇の乾燥具合を確認する 舌や口唇が乾燥している状態は脱水症の疑いがあります。また、手が冷たくなっていないか触って確認することも有効です。脱水状態になると、手足に血液が十分に回らず冷たくなることがあります。

適切な水分補給とは

大量の汗で血中のナトリウムが失われた状態では、水分だけを急速に大量に補給すると血中のナトリウム濃度が低下し、痙攣を引き起こす可能性があります。

適切な水分補給とは、水分と電解質をバランスよく補給することです。

大量の汗をかいた場合は、スポーツドリンクや経口補水液などを使用して、バランスよく水分と塩分(電解質)を補給するようにしてください。

水分補給時の目安を以下に紹介します。

脱水していない場合 水やノンカフェインのお茶など
軽い脱水状態や多量の汗をかく時 スポーツドリンクや経口補水液
脱水症状がある場合 経口補水液

脱水症状がある場合は、経口補水液が効果的です。

市販のものを常備しておくと便利ですが、経口補水液は簡易的に作ることもできますので、レシピを紹介します。

UNICEF/WHOレシピを基にした経口補水液の作り方

様々な経口補水液の作り方がありますが、UNICEF/WHOレシピを基に、以下のレシピで作ることをおすすめしています。

作り方は、以下の材料を混ぜるだけです。

なお、保存には向きませんので、その日のうちに飲み切るようにしてください。

・水:1L

・砂糖:40g(大さじ4と1/2杯)

・塩:3g(小さじ1/2杯)

・レモン果汁(カリウム補給のため):少量

経口補水液に関する注意点

経口補水液は、バランスよく水分と塩分を補給できるメリットがありますが、糖分が多いため飲みすぎには注意が必要です。

また、大量の汗をかく場合を除き、暑い時期でも過剰な塩分補給には注意が必要です。

特に、高血圧や腎臓病の方は基本的に減塩が必要です。

※高血圧や糖尿病などで、塩分や糖分制限がある場合は、経口補水液を摂取しても良いか、又、成分や摂取量などについて、かかりつけの医師にご相談ください。

暑い時期に運動する場合

暑い時期に運動する方は、特に注意が必要です。多少の個人差はありますが、気温を参考にして、安全に運動できるように心がけましょう。

気温によっては、外での運動を中止することも大切です。

なお、室内であっても、気温が高すぎる場合は熱中症になる可能性があるので、十分な注意が必要です。

気温と運動の安全性

24℃未満 ほぼ安全:適宜水分補給を行いましょう。
24~28℃ 注意:積極的に水分補給を行いましょう。
28~31℃ 警戒:積極的に休憩しましょう。
31~35℃ 厳重警戒:激しい運動は中止です。
35℃以上 危険:運動は原則中止です。

熱中症が疑われる症状と対処方法

熱中症と一言に言っても、軽症から重症まで様々な症状があります。

特に重症の場合は、迅速に救急車を呼ぶことが求められます。

症状によって対処方法が異なりますので、症状を正しく把握することが大切です。

軽症の熱中症の症状

・意識ははっきりしている。

・めまいや立ちくらみ、ふくらはぎの筋肉の痙攣がある。

・手足が痺れて冷たくなる。

・食欲低下や舌・口唇の乾燥、脈が早くなる。

対処方法

・涼しい場所に移動する(冷房の効いた屋内や風通しの良い日陰や木陰が適している)。

・衣服をゆるめ、首の周りや脇の下、足の付け根などを冷やして体温を下げるようにする。

・身体に水をかけたり、水で絞ったタオルを当てたり、うちわなどで風を送ったりして冷却する。

・状況に応じてスポーツドリンクや経口補水液、水などをバランスよく摂取する。

・体調が回復しない場合は、早めに医療機関を受診する。

中等症の熱中症の症状

・頭痛や吐き気、嘔吐がある。

・体がだるく、普段と応答の様子が異なる。

・意識が何となくおかしい。

・微熱や血圧の低下が見られる。

対処方法

・身体を冷やしながら、迅速に医療機関を受診する。

・状況に応じて、高齢者や小児の場合は救急車(119番)を要請する。

重症の熱中症の症状

・意識がない。

・呼びかけに対して返答がおかしい。

・全身の痙攣やまっすぐ歩けない状態、身体が熱い(体温が高い)。

対処方法

・救急車を呼び、到着までの間、積極的に身体を冷やす。

・意識がある場合でも急速に重症化することがあるため、目を離さないように注意すること。

・自力で水分補給ができない場合や意識がない場合は、すぐに救急車を呼ぶ。

まとめ

熱中症は誰にでも起こる可能性があるため、日常的に栄養バランスのとれた食事、十分な睡眠、適度な運動を心掛けて体調を整えましょう。

また、熱中症を予防するために、暑さ対策とこまめな水分補給を行い、少しでも熱中症が疑われる場合は、迅速な対応がとれるよう、日頃から気をつけておきましょう。