熱中症を予防しよう
監修・執筆
監修:医師 加藤 美貴(アムスランドマーククリニック勤務医)
執筆:保健師 渋谷 聖子(アムスランドマーククリニック健康増進科)
はじめに
毎年、日本の暑さは厳しさを増しています。熱中症で救急搬送される人が増えており、重症化すると死亡する危険性もあります。熱中症の正しい知識と予防、対処法を身につけましょう。
なお、熱中症患者の半数以上は65歳以上の高齢者です。というのも、高齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能が低下しており、暑さに対する身体の調節機能も低下しているからです。そのため、高齢者の方は十分に注意が必要です。
熱中症とは
熱中症とは、気温や室温が高い中での作業や運動により、体内の水分や塩分(ナトリウム)などのバランスが崩れ、体温の調整機能が働かなくなり、体温上昇、めまい、体がだるいなど、様々な症状を引き起こします。
ひどい時には、けいれんや意識障害など、重い症状を引き起こします。
例年、梅雨入り前の5月頃から発生し、梅雨明けの7月下旬から8月上旬に多発する傾向があります。
特にその期間は、家の中でじっとしていても室温や湿度が高くなりがちで、熱中症になることがあるため、注意が必要です。
熱中症が起きるメカニズム
体温が上昇する
人間は、身体を動かすと体内で熱が作られて体温が上昇します。
体温が上がった時は、息を吐いたり、汗をかいたりして空気中に皮膚表面から熱を逃がすことによって体温を調整しています。
通常は、こうした体温を調整する機能がうまく働いているため、人間の体温は36℃~37℃くらいに保たれています。
熱を外に逃せなくなる
しかし、気温や湿度が高い環境で激しい運動を行なうと、身体の中で作られた熱をうまく外に逃がせなくなります。
体温の調整がうまくできなくなる
さらに、そのような環境下で運動や活動を継続すると、身体がさらに熱くなり、汗をかいて身体の水分や塩分、ミネラルが減っていきます。
そうすると、身体内の血液の流れが悪くなり、皮膚表面から空気中に熱を逃がすことができなくなり、汗もかけなくなります。
熱がこもってさらに体温が上昇し熱中症となる
このように体温の調整がうまくできなくなると、身体の中に熱がこもって体温が上昇します。
汗をかいて身体から水分が減少していくと、筋肉や脳、肝臓や腎臓などに十分に血液が行き渡らず、熱けいれんを起こしたり、ひどい場合は意識を失ったり、肝機能や腎機能が低下する場合もあります。
こうして身体の調子が悪くなって、熱中症が引き起こされます。
熱中症になりやすい人
熱中症は自分自身がそうなりやすいかどうかを知っておくだけで、対処方法の幅は広がります。
以下の表にあてはまる方は熱中症になりやすい傾向があります。
十分に注意して、熱中症にならないよう対処を行いましょう。
乳幼児 | 体温調節機能が十分に発達していないため、大人よりも熱中症にかかりやすいです。 |
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高齢者 | 温度に対する感覚が弱くなるため、室内でも熱中症にかかりやすいです。 |
屋外で働く方 | 屋外で長時間にわたり作業するような職業の方は、夏場は常に熱中症の危険にさらされています。 |
室内で過ごす方 | 熱中症というと、暑い屋外で発生するイメージが大きいですが、室内にいても条件によって(室温や湿度の高さ、風通しの悪さ、水分不足など)熱中症を起こします。 |
肥満の方 | 皮下脂肪が多いほど、体内の熱が外に逃がれにくく、熱中症にかかりやすいです。 |
次回は、「熱中症の予防と症状があった場合の対処」について予定しています。