テレワーク(在宅勤務)による運動不足を解消しましょう
監修・執筆
監修:医師 加藤 美貴(アムスランドマーククリニック勤務医)
執筆:保健師 渋谷 聖子(アムスランドマーククリニック健康増進科)
はじめに
新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークでの働き方が浸透しつつある現在、身体を動かす機会が減り、運動不足を実感する人が増えていると考えられます。
通勤時と在宅勤務時の歩数の差など、日常生活活動量を比較すると、在宅勤務時の運動量が大幅に減少している傾向にあります。
運動不足がもたらす身体への影響
生活習慣病の発症リスクが高まる
運動不足になると、消費エネルギーが少なくなり、体重が増加する要因となります。体重増加は、肥満やメタボリックシンドロームの原因となります。さらに、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の発症及び悪化のリスクが高まります。
体力の低下や頭痛や肩こりを起こしやすくなる
運動不足が続けば、使われていない筋肉が衰えていきます。特に下半身の筋力が低下するため、血液循環が滞り、身体が冷えてきます。また、ちょっとした活動でも、疲れたり息切れを起こしたりと、日常生活の様々な面で体力の低下を実感するでしょう。
さらに、筋力が低下することで、バランス感覚が悪くなり、姿勢が悪くなったり、血行不良から頭痛や肩こりなどを起こしやすくなります。この様な状況が続くと、ロコモティブシンドロームを引き起こす可能性も強くなります。
※「ロコモティブシンドローム」とは、加齢や運動不足、骨粗鬆症や変形性膝関節症などにより、筋肉や関節、骨の機能が低下し、「歩く」「立ち上がる」など、主に移動能力が衰えていく症状を指します。
ストレスを感じやすくなる
運動不足は、自律神経の働きを抑制し、気分の落ち込みやストレスが感じやすくなる原因にもなります。さらに、運動せずにデスクワークを続ければ、脳は疲れても体は疲れず、不眠に繋がります。
時間の区切りのないデスクワークで、昼夜のメリハリを感じにくくなり、日中のセロトニンと睡眠のメラトニンのホルモンのバランスが崩れ、概日(サーカディアン)リズム睡眠障害を引き起こす可能性があります。
運動不足解消のために取り入れたい習慣
運動不足は日々の習慣をほんの少し改善することで解消できることもあります。
正しい姿勢
ピンと姿勢を伸ばした状態から胸を張ると同時に、肩甲骨を中心に寄せていくと、姿勢を正すことができます。腹筋や背筋を中心に全身の筋力を強化し、体幹そのものを鍛えられます。
ながら運動
テレビや動画を見ながら、ストレッチを行なったり、つま先立ちで歯磨きしたり、かかとの上げ下げをしながら皿洗いなど、忙しくまとまった時間を確保できない方でも、ながら運動なら手軽に行なえます。
階段の利用
外出の際は、エレベーターやエスカレーターを控え、意識的に階段を使うようにしましょう。
家事では大きく動作
掃除や洗濯などの家事を行なう際に、1つ1つの動作を大きくする事、身体のどこの筋肉が使われているかを意識する事の2点を心掛けるだけで、家事をしっかりとした運動に変える事も可能です。
他にも、床は掃除機ではなく雑巾がけすることも運動です。日常生活の動きを意識して増やしていきましょう。
自宅でできる運動不足解消法
ストレッチ
パソコンの前で同じ姿勢を続ける事により、関節や筋肉は硬くなってしまいますので、ストレッチを取り入れることでやさしくほぐすことができます。
特に、首や肩、腕や腰などパソコン作業で硬くなった箇所をほぐすストレッチを取り入れることが効果的です。伸ばす筋肉や部位を意識しながら、呼吸を止めずに、痛くなく気持ち良い程度に伸ばすのがポイントです。
オンラインフィットネスを利用するのも選択肢の1つです。スポーツジムにでかけたり、身なりを整えたりする必要がないため、仕事の合間や仕事終わりに無理なく利用できます。
ラジオ体操
有酸素運動とストレッチの両方の要素が備わっている優秀な運動がラジオ体操です。合計約6分半の運動の中に、全身をまんべんなく動かすプログラムが組み込まれています。
「ラジオ体操第1」は、身体全体の筋肉をほぐして柔軟性を取り戻すことで、血行促進・肩こり緩和・背骨や腰のゆがみ対策が期待できます。
「ラジオ体操第2」は、筋力を強化する事にポイントが置かれ、運動強度は、第1の体操より強くなっています。
スクワット
スクワットは下肢全体を鍛えることができる運動で、筋力アップの効果が期待できます。
ちなみに、効果的に筋力を鍛えるには下半身から鍛える事が重要です。筋肉は上半身よりも下半身のほうが衰えやすく、1日の歩数が減少すると、大きく影響を受けるのは下半身です。
踏み台昇降
踏み台昇降は、踏み台の昇り降りを繰り返す有酸素運動になります。踏み台の高さを調節することによって、運動強度を手軽に調節できます。
背中やお尻、太ももなどの筋肉を使う全身運動なので、カロリー消費だけでなく、体幹を引き締める効果やふくらはぎ痩せ、ヒップアップも期待できます。
屋外で行なう運動不足解消法
ウォーキングや軽いジョキング
始業前、昼休憩時、終業後など、1日のスケジュールの中に、意識的にウォーキングを取り入れましょう。ウォーキングをする際、のんびり歩くのではなく、背筋を伸ばして、胸を張り、腹筋を意識して、歩幅を広くとって、踵から着地して早足で歩く事がポイントになります。
膝や腰に不安がある人は、プールで水中ウォーキングをするのもおすすめです。水中では、浮力で体重が7割くらいに軽減されるため、負担を減らしながら運動をすることができます。
ゴルフや水泳、野球など
元々、趣味で行なっていたスポーツ、例えばゴルフや水泳、野球などの運動習慣は継続していきましょう。
基礎疾患のある方やご高齢の方は無理をしない
運動を始めるにあたって、基礎疾患のある方やご高齢の方は、無理をせずに、主治医にご相談の上で、実施しましょう。
まとめ
運動不足が慢性化すると、体重増加や肥満、生活習慣病、ロコモティブシンドロームなど、様々なリスクが高くなってしまいます。
自宅では、ストレッチや体操、簡単な筋トレを実践し、屋外では、散歩やウォーキングを取り入れながら、健康維持のために、できることから少しずつ始めていきましょう。