エネルギー収支を理解すれば太らない! 1日の適正カロリー計算法

監修・執筆
監修:医師 吉野 初音(アムス丸の内パレスビルクリニック勤務医)
執筆:管理栄養士 金 愛梨(アムス丸の内パレスビルクリニック健康増進科)
太る理由とは
太るかどうかは、食事からとった「摂取エネルギー」と日常生活の中で消費した「消費エネルギー」の収支によって決まります。
摂取と消費のバランスが摂取に傾いていると、消費されない余分なエネルギーは体脂肪として蓄えられます。
今回は、適切な体重を維持するための、エネルギー収支バランスを保つ方法についてご紹介します。
1日に必要なエネルギー量を知ろう
1日にどのくらい食べればいいか、ご自身の適切な摂取エネルギー量(カロリー)をご存じでしょうか。
1日に必要なエネルギー量は、いくつかの方法で算出することができますが、日本人の食事摂取基準では、「基礎代謝量」と「身体活動レベル」をかけた、推定エネルギー必要量を参考表として示しています。
基礎代謝量とは
基礎代謝量とは、生きていくために最低限必要なエネルギーのことを指します。
私たちが消費するエネルギーの60~70%を占めるのは基礎代謝量です。
基礎代謝量は性別・年齢・身長・体重によって異なり、年齢とともに低下します。
身体活動レベルとは
身体活動レベルとは、身体活動の強さを表す単位のことを指します。
身体活動エネルギーは、基礎代謝以外のエネルギー消費であり、計画的・意図的に行われる「運動」と、運動以外の「生活活動」の合計です。
身体活動レベルは、「低い」「ふつう」「高い」に分類されます。
- 低い・・・生活の大部分が座位で、静的な活動が中心
- ふつう・・・座位の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツのいずれかを含む
- 高い・・・移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている
- 推定エネルギー必要量(kcal/日)
- 身体活動量の数値例
基礎代謝量と身体活動レベルをかけて算出された推定エネルギー必要量が下記の表となります。
日本人の食事摂取基準(2025年版)より
たとえ、性別・年齢・身長・体重・身体活動レベルが完全に同じであっても、個人でエネルギー必要量は必ずしも同じではなく、個人差が存在します。
推定エネルギー必要量は、主に給食管理や体重が標準域にある方への値のため、あくまでも目安として考えていただくとよいでしょう。
生活習慣病予防のための、適切な摂取エネルギー量
推定エネルギー必要量をもとに、ご自身の1日に必要なエネルギー量をご確認いただいた方は「こんなに摂っていいんだ」と思われた方も多いのではないでしょうか。
前述のように、エネルギー必要量は個人差があり、減量を目的としたものではありません。
健康診断で減量が必要と言われた方や、生活習慣の改善が必要な方への摂取エネルギー量は、下記の計算式で算出することができます。
【ステップ①】標準体重を計算しましょう
【身長 m】×【身長 m】× BMI22 =【 ㎏】(標準体重)
例えば身長170㎝の場合、身長は1.7mとなります。
BMIは、体重と身長から算出される痩せや肥満度を表す体格指数です。
【ステップ②】1日の摂取エネルギー量を計算しましょう
【 ㎏】(標準体重)×【身体活動量*1(25~40kcal)】 =【 kcal/日*2】
25~30kcal・・・大部分が座位の静的活動
30~35kcal・・・座位中心だが、通勤・家事・軽い運動
35~40kcal・・・力仕事、活発な運動習慣がある
*1:身体活動量については、数値に幅がありますので、自分自身の活動量に応じて適宜数値を代入して計算してください。
25kcal:在宅勤務
27kcal:会社勤務でデスクワーク中心
30kcal:会社勤務でデスクワーク中心だが、職場内での移動が多い
例えば身長170㎝の事務職(会社勤務でデスクワーク中心)の男性の場合、
標準体重:1.7m×1.7m×BMI22=63.6㎏
1日の摂取エネルギー量:63.6㎏×27kcal=1717kcalとなります。
*2:75歳以上の方・治療が必要と言われた方・治療中の方は、主治医にご相談ください。
この摂取エネルギー量を3で割った値が1食分の目安です。
この値を覚えておくと、外食やコンビニでのメニューの選択にも役立ちます。
あなたのエネルギー収支バランスは?
1日の適切なエネルギー量が分かったところで、減量が必要な方は「摂取エネルギー量を減らせばよい」と考えると思います。
エネルギー収支バランスを考えるうえで、大切なポイントは摂取エネルギー量だけで判断しないことです。
太る原因は、摂取エネルギー量が多いことだけでなく、生活の中での消費エネルギー不足も大きく影響しています。
食べる量を減らして体重を減らそうとすると、体は省エネモードになり、基礎代謝量が減って消費エネルギー量が減ります。
さらに、栄養素も不足するため筋肉が減り、たとえ痩せたとしてもリバウンドしやすく、体調も崩しやすくなります。
40代以降は筋肉量の減少に伴い、基礎代謝量も低下します。
そのため、減量をするには「食べる量を減らす」「運動量を増やす」に加えて、「基礎代謝量を増やす」ことが必要です。
基礎代謝量を増やす効果的な方法は、筋肉量を増やすことです。
筋肉量を増やすためのトレーニング・運動量を増やす方法については、過去のコラムでも解説しています。
過去のコラム:ポッコリお腹を撃退しよう
過去のコラム:身体活動による消費エネルギーを把握して効果的な減量に取り組む
過去のコラム:テレワーク(在宅勤務)による運動不足を解消しましょう
まとめ
1日に摂るエネルギー量は、多すぎると肥満や生活習慣病などのリスクが高まります。逆に、少なすぎると栄養障害などのリスクが懸念されます。
ご自身の生活を振り返り、エネルギー収支のバランスがどうなっているかを考えてみましょう。
次回は、1日の摂取エネルギー量のうち「何をどれだけ食べればいいのか」、食事バランスについてお伝えします。