あと一杯、あと一杯が肥満への第一歩
監修・執筆
監修:医師 加藤 美貴(アムスランドマーククリニック勤務医)
執筆:管理栄養士 小林 真紀子(アムスランドマーククリニック健康増進科)
はじめに
今回は、厚生労働省が推進する健康日本21の「節度ある適度な飲酒」について記載します。
しかし、世界心臓連合が「どんなレベルのアルコール消費も健康的な生活の損失につながる可能性がある」と発表しているように、飲酒習慣のない方に飲酒を勧めるものではありません。また、女性や高齢者ではより少ない飲酒量が適当であるとされていますので、ご留意ください。
お酒は肥満の要因の1つ
厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」を、1日平均の純アルコールが20g程度と定義しています。これは、ビールだと500ml、日本酒だと1合弱、赤ワインだとグラス2杯弱の量です。つまり、これ以上の量は、適度な飲酒量ではないということです。
そして、飲酒は肥満を引き起こす要因になることがあります。
水やお茶など500ml以上の水分を日々飲んでいても問題はないのに、なぜお酒は摂取するだけで肥満につながるのか疑問に思う方も多いと思います。
お酒による体重増加の原因
1.お酒を飲むことで摂取エネルギーが増える
アルコールは1gあたり7kcalのエネルギーがあります。さらに、ワインやビール、日本酒などの醸造酒は糖質も含むためエネルギーが高くなります。下記の表で同じアルコールの量であってもエネルギーが異なるのはそのためです。
焼酎やウイスキーを糖分の入った清涼飲料水で割って飲んだ場合は、清涼飲料水の分のエネルギーがさらに追加されることになります。甘いカクテルは、量は少なくてもエネルギーは高い傾向にあります。
例えば、ビールの「節度ある適度な飲酒」は500mlで、摂取するエネルギーは約200kcalです。ビールだけで成人男性の1日に必要なエネルギーの7%~10%ほど摂取することとなります。
お酒を飲むことで、どれだけ摂取エネルギーが増えるかを意識することは、肥満を防ぐために大切なことです。
約20gの純アルコールを含むお酒の量(㎖)とエネルギー(kcal)
お酒の種類 | アルコール度数 | 量(ml) | エネルギー |
---|---|---|---|
ビール | 5% | 中瓶1本・中ジョッキ1杯(500ml) | 197kcal |
日本酒 | 15% | 1合弱(160ml) | 163kcal |
赤ワイン | 12% | グラス2杯弱・ボトル約1/4本(200ml) | 136kcal |
白ワイン | 12% | グラス2杯弱・ボトル約1/4本(200ml) | 150kcal |
焼酎 | 25% | 1/2合強(100ml) | 140kcal |
ウイスキー | 40% | ダブル1杯(60ml) | 136kcal |
ブランデー | 40% | ダブル1杯(60ml) | 136kcal |
缶チューハイ | 7% | 1缶(350ml) | 179kcal |
2.おつまみを食べることでさらに摂取エネルギーが増える
アルコールは食欲を増進させるので、おつまみを食べ過ぎるようになります。おつまみはエネルギー量の高い物が多く、よりエネルギーを摂取してしまいがちです。さらに、食事時間が長くなって食べる量が増えることも影響し、エネルギー過多になる傾向があります。
おつまみの定番の揚げ物やナッツ類は、アルコールに合う食べ物ですが、エネルギー量が高い食べ物でもあります。おつまみを食べる場合は、枝豆やトマト、海藻サラダなど、エネルギー量が少ないものを選ぶようにしましょう。
3.肝臓で中性脂肪の合成が促進される
肝臓でのアルコール分解能力には個人差がありますが、一般的に体重60~70kgの人で1時間に5~7gとされていて、ビール中瓶1本(純アルコール20g)を肝臓で分解するには3~4時間かかるといわれています。
アルコールの摂取量が多すぎると、アルコールを分解する時に肝臓で中性脂肪の合成が促進されます。中性脂肪が固まったものが、代謝しきれなくなると内臓に沈着していきます。過度な飲酒時、おつまみを食べずに摂取エネルギーを抑えたとしても、脂肪が増えるのはこのためです。
また、毎日飲み続けて、肝臓に負担がかかり続けると肝臓の機能が落ちてしまいます。こうなると、肝臓の働きがゆっくりになり、より中性脂肪が増える要因となります。
エネルギーオーバーを防ぐ飲み方
同じ量のアルコールを摂取するとしても、摂取エネルギーを抑える方法はあります。飲酒の際は以下の方法を取り入れて、エネルギーオーバーを防ぎましょう。
飲酒量を減らす
・小さめのおちょこやグラスで飲む
・濃いお酒を水やお湯で割って薄めて飲む
・水分が欲しくなる濃い味のメニューを避ける
おつまみの食べ過ぎを減らす
・飲む前に水かお茶を飲んで空腹を避ける
・合間にお水を飲む
肝臓の機能を保つ
・ノンアルコール飲料を利用する
・週に2日は休肝日を設ける
・運動直後は脱水傾向のため、飲酒は水分と時間を充分にとってからにする
まとめ
肥満を防ぐためには、運動も必要ですが、過剰なエネルギー摂取を行わないことが第一です。「運動で体を動かしているからあと一杯飲んでも大丈夫」と思っていても、ビール1杯分のエネルギーを消費するのに、約20分のランニングが必要であり、摂取エネルギー量に対しての運動量が不足しがちです。
飲酒はあと1杯、あと1杯と飲酒を続けてしまいやすく、過剰エネルギー摂取しやすいのも事実です。飲酒は節度ある適度な量に留め、生活習慣病のリスクを抑えるとともに、摂取エネルギーをきちんと把握して、肥満防止に努めましょう。