高血圧ってどういう病気?
監修・執筆
監修:医師 加藤 美貴(アムスランドマーククリニック勤務医)
執筆:管理栄養士 小林 真紀子(アムスランドマーククリニック健康増進科)
はじめに
日本で最も多い生活習慣病は高血圧で、推定4,300万人いると言われています。
自覚症状がほとんど現れない高血圧ですが、血圧が高い状態が長く続くと、脳、心臓、腎臓、眼などに大きな障害を引き起こし易くなります。
症状のない状態の間に血管が傷つき、血管が弾力を失って硬くなる“動脈硬化”が進み、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気になるリスクが高まります。
高血圧を指摘されたら、「自覚症状がないから大したことではない」と放置せず、血圧コントロールに取り組むことをお勧めします。
血圧とは
血圧とは、血液が全身に送られる際に血管の壁にかかる圧力のことです。
収縮期血圧は、心臓が収縮して血液が押し出される時の、血管に高い圧力がかかっている状態の値で、拡張期血圧は、血液が心臓に戻ってくる時の、心臓が拡張し血管にかかる圧力が低下している状態の値です。
血圧は、心臓から送り出される血液量(心拍出量)と、血管内での血液の流れにくさ(末梢血管抵抗)等の要素で決まります。
血圧は、食事摂取、会話、歩行など、日常動作の多くによって、常に変動していますが、1日の中では一般的に昼間より夜間に低下し、早朝に上昇する、という日内リズムがみられます。
また、血圧は季節による変動もあり、冬は高くなり、夏は低くなることが多く、高血圧の方では、冬と夏で収縮期血圧が10mmHg程度変動する場合があります。
高血圧の診断基準
高血圧は、収縮期血圧及び拡張期血圧のいずれか、もしくは両方が基準値を超えて上昇した状態です。
成人における血圧値の分類
※上記はアムスが使用する所見名と異なる場合があります。
診察室血圧で収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHgのどちらか一方でも超えると高血圧と定義されています。
また、近年では収縮期血圧130mmHg、拡張期血圧80mmHgのどちらか一方でも超えると高値血圧と分類され、この段階から血圧コントロールを始めることが勧められています。
家での血圧測定の勧め~高血圧のタイプ~
血圧は常に変動しており、医療機関でたまに測定するだけでは血圧の状況を把握することは困難です。
高血圧のタイプ
(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」を参考に作成)
特に家庭血圧だけ高い仮面高血圧や、家庭でも診察室でも高い持続性高血圧は、血圧が正常な場合より脳卒中や心筋梗塞などのリスクが2倍以上にもなると言われています。
また、病院では緊張して高い値が出ても、家庭では正常という白衣高血圧の場合もあります。
まずは、『どの時間帯にどの程度血圧が上がるか』を把握することが大切です。
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」では、家庭血圧の測定条件と測定回数について、『朝(起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前、朝食前、座位1~2分の安静後)と晩(就床前に座位1~2分の安静後)の1日2回、1機会に原則2回測定し、その平均をとる』としています。
血圧はなぜ高くなるのか
高血圧治療ガイドライン2019によりますと、原因を1つに特定できないタイプの高血圧(本態性高血圧)が、約9割を占め、様々な要因が絡み合って血圧が高くなります。
一方、原因を特定できる高血圧(二次性高血圧)は、腎臓の病気やホルモンの分泌異常、睡眠時無呼吸症候群などが原因となっている場合があります。
また、塩分の摂り過ぎや肥満、喫煙、飲酒、ストレス、睡眠不足など、私たちの日々の生活の中にも血圧を上げる要因が潜んでいます。
更に遺伝的な要因が加わると、高い確率で高血圧になると考えられています。
加齢の影響については、50歳以上の男性と60歳以上の女性では50%以上の方が高血圧と言われています。男性では肥満を伴う高血圧の方が増えているようです。
血圧が高いままでいると何が悪いか
高血圧を放置すると、無症状のまま全身の血管で動脈硬化が進む場合が多く、心筋梗塞や脳卒中など様々な病気を招きます。
日本人の死因(2022年)の第2位は心疾患、第4位は脳血管疾患ですが、下記の図からも分かるように高血圧が日本人の脳心血管疾患の最大の危険因子となっています。
また、介護が必要になる原因も脳卒中等の脳血管疾患の割合が高く、寿命のみならず、『健康寿命』を延ばすためにも血圧のコントロールが大切です。
リスク要因別の関連死亡者数(2019年)
※厚生労働省:リスク要因別の関連死亡者数(2019年)から引用
生活改善によって期待される血圧低下の程度
血圧を下げるには、食事をはじめとする生活改善が基本です。ただし、血圧が高いほど、生活改善だけで目標値まで下げるのは難しく、生活改善の効果が不十分な場合は、持病や既往歴を考慮し、降圧薬(血圧を下げる薬)の服用が検討されますが、降圧薬を服用していても血圧コントロールには生活改善が欠かせません。
減塩、減量、運動、節酒など、各項目を単独で改善することによる血圧低下の程度は、平均4~5mmHg程度と言われていますが、様々な生活改善を組み合わせる事により、更に大きな効果が期待出来ます。(ただし、血圧が高すぎる場合は、自己流で運動を開始する前に、近医で相談してからの運動開始をお勧めします。)
次回は、血圧をコントロールするための具体的な方法についてお伝えします。