コラム

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2022.12.24

4.その他

ウイルスから自分を守れ!~免疫パワーアップ法~

Contents目次

監修・執筆

監修:医師 吉野 初音(アムス丸の内パレスビルクリニック勤務医)
執筆:保健師 桐原 沙也佳(アムス丸の内パレスビルクリニック健康増進科)

はじめに

今年の冬は、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザが同時流行する可能性が高いと言われています。そのようななかで、感染や重症化予防に最も役立つのは、もともと私たちの体に備わっている「免疫」です。

新型コロナウイルスも季節性インフルエンザもワクチンで重症化を予防することができますが、ワクチンだけでなく免疫力を高めることでこれらの感染症や病気にかかりにくい身体にすることができます。

免疫とは?

免疫は病原体や毒素、異物の体内への侵入や広がりを防ぐメカニズムですが、生まれつき体に備わっている「自然免疫」と生後に感染症にかかることで獲得する「獲得免疫」があります。

これらの免疫の総合力が外敵より強ければ、感染や重症化を防ぐことができるのです。

自然免疫

自然免疫は、生まれつき体に備わっているシステムで、皮膚や粘膜、殺菌作用のある分泌液といった物理的・化学的バリアのことです。体内に侵入してきた病原体に素早く反応します。

獲得免疫

獲得免疫は、病気にかかることで文字通り「獲得」していく免疫機能です。つまり一度体内に入った病原体の情報を学習し、攻撃方法を記憶する仕組みです。

具体的には、侵入した病原体に対抗するための抗体を作って攻撃し、次に同じ病原体が入ってきたときに、より素早く撃退するシステムです。このおかげで、病気にかかりにくくなったり、かかったとしても重症化しにくくなったりするのです。

免疫力が低下する原因

免疫力が低下する原因

現代的な生活をしている人の多くは、この免疫機能が低下しています。免疫は体内時計や自律神経、ホルモンに大きく影響を受けます。

免疫力が低下する原因として、加齢や生活習慣の変化、食生活の乱れ、喫煙、運動不足、睡眠障害、慢性的なストレスなどさまざまな原因が考えられます。

コロナ禍以降ストレスフルな日常のなかで、仕事もプライベートの時間もスマートフォンやパソコンから離れられない生活をしていると、自然に生活習慣が乱れ、体内時計や自律神経のバランスを崩し、睡眠の質も低下し結果的には体調を崩してしまうのです。

特に不眠傾向や仕事で極度の疲労がある人は感染症にかかりやすく、重症化、後遺症のリスクが高まると言われています。

免疫力を高める方法

免疫力は加齢によっても低下していきますが、生活習慣を改善することで本来私たちの誰にでも備わっている免疫機能を自然に高めることができるのです。

それにはまず「食事」「適度な運動」「充分な休息・休眠」「笑う・楽しむ」「温める」の5項目が重要です。そしてそのうちの1つ、特に大切な「食事」に今回は注目します。

私たちの生命をつなぐために食事は欠かせません。ただし、その内容や食べ方によっては、健康を脅かす恐れもあるのです。今回は免疫力を高める食事のポイントについてご紹介します。

1.三食規則正しく食べる

三食規則正しく食べる
腸内環境を良好に保つためには、食事のタイミングが重要です。炭水化物、脂質、たんぱく質、食物繊維など栄養のバランスのとれたものを3食毎日決まった時間に食べるようにしましょう。

朝食は起床後1時間以内に、夕食は眠る3時間前までに済ませるのがベストです。適度な空腹は成長ホルモンの分泌を促し、体の新陳代謝を高めます。

起床後にコップ一杯の水を飲んで腸を刺激するのもよいでしょう。夕食が遅くなる場合は、脂質の低い鶏肉や野菜を中心に軽く済ませるのがベターです。

消化の良いものだけを少量ずつ分食するのもおすすめです。

2.タンパク質をしっかり摂る

タンパク質は、筋肉や骨、臓器、皮膚、爪などの材料となるだけでなく、免疫細胞の主成分にもなっています。タンパク質が不足すると、免疫力の低下につながります。

免疫力を高めるためにも、肉や魚、卵、大豆製品を積極的に摂りましょう。

タンパク質は私たちにとって大切な栄養素ですが、多く摂りすぎると、カロリーオーバーや肥満、コレステロールの値に影響がでる可能性もあります。

食材の量は肉や魚の場合、1食あたり100g程度が適量です。肉や魚の大きさの目安としては、「手のひら1枚分」ほどです。

手のひらで量る肉と魚

3.抗酸化食材を取り入れる

鉄などの金属が酸素と結びつくと、酸化によってさびてしまいます。これと同様に私たちの体も酸化します。細胞が酸化の影響を受けると劣化し、血管もダメージを受け、体の老化につながります。

その酸化の原因は活性酸素です。生きている限り、活性酸素は多かれ少なかれ発生するため、体は酸化のリスクから逃れられません。

体内でつくり出される活性酸素を除去する抗酸化物質は、年齢とともに減少します。そこで頼りになるのが、抗酸化物質を豊富に含んだ野菜や果物などの抗酸化食材です。

野菜には豊富なビタミンA・C・Eが含まれています。これらは、抗酸化ビタミンとも呼ばれ免疫力向上に効果的です。主に緑黄色野菜に多く含まれているのが特徴です。

主な食材として、ニンジンやホウレン草にはビタミンAが、レモンやピーマン、ブロッコリーにはビタミンCが、カボチャやアーモンドにはビタミンEが豊富に含まれています。

4.野菜、きのこ、海藻類、食物繊維をたっぷり摂る

野菜の目標摂取量は1日350g(緑黄色野菜120g+淡色野菜230g)です。1食の目安は生野菜だと両手1杯分、加熱した野菜なら片手1杯分です。

意識しなければ十分な量を摂取することができませんので、1食1皿以上・1日5皿分を食べることを目指しましょう。

野菜のほか、きのこ、豆、いも、海藻料理も含めて副菜とし、1日5~6皿が摂取目安となっています。

食物繊維には、中性脂肪を減らし、血糖値の上昇を防ぐ血管の炎症を抑える、動脈硬化を防ぐ、便通を改善する等の働きがあります。

納豆、オクラ、モロヘイヤ、ゴボウなどの野菜、海藻類に含まれる水溶性食物繊維と、大豆やおから、いも類に含まれる不溶性食物繊維を2:1のバランスで摂ることが大切です。

食物繊維を毎日取り入れて腸を健康に保ちましょう。

生野菜だけだと350gはなかなか難しいかもしれませんが、加熱することで、かさが減り意外と簡単に摂取することができます。

市販のカット野菜や冷凍野菜、手軽に食べられるプチトマトやきゅうりなどを常備しておくのもおすすめです。

5.動物性と植物性の発酵食品を摂って腸内環境を整える

動物性と植物性の発酵食品を摂って腸内環境を整える

体内にあるリンパ組織の約7割が腸にあると言われています。

腸には500種類以上、100兆個ともいわれる細菌が棲息し、それぞれが腸内に送られてきた食べ物を分解する病原体を排除するビタミンやホルモンを合成するといった役割を果たし、健康維持に欠かせない働きをしています。

腸内細菌は大きく、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分けられこれらが2:1:7のバランスで存在しているのが最も理想的です。

そのため、免疫力を高めるためには、腸内に善玉菌が占める割合を増やし、腸内細菌に多様性を持たせることが重要です。

善玉菌が多いと食べ物の消化吸収がスムーズになり、アレルギー症状が軽くなったり、心が穏やかにポジティブになったり、代謝が上がって痩せやすくなったりというメリットも得られます。

善玉菌を増やす発酵食品や食物繊維、オリゴ糖を十分にとりましょう。

発酵食品・・・ヨーグルト、チーズ、みそ、漬物、キムチ、納豆、塩麹、甘酒など
食物繊維・・・野菜
    ・・・芋類(こんにゃく、さつまいも、ながいも、じゃがいも など)
    ・・・きのこ類(しめじ、えのき、エリンギ、干ししいたけ など)
    ・・・果物(りんご、バナナ、キウイフルーツ、アボカド など)
オリゴ糖・・・玉ねぎ、ゴボウ、大豆 など

おわりに

生活習慣の乱れで免疫力が低下してしまうこともあります。
・甘いもの、スナック菓子がやめられない
・丼物、麺類が大好きで揚げ物、ファストフードをよく食べる
・魚や野菜はほとんど食べない
・食べる時間が不規則になりがち
このような偏った食事は免疫機能を下げる原因となります。

まずは、栄養バランスのとれた食事を規則正しく摂り、その栄養素をしっかりと全身に届けることが大切です。
免疫力を高めて、様々な感染症や病気から体を守り、健やかな日常を取り戻しましょう。