体内時計を整えて生活習慣病予防~時間栄養学~
監修・執筆
監修:医師 金藤 昌子(アムスニューオータニクリニック勤務医)
執筆:管理栄養士 石居 麻梨江(アムスニューオータニクリニック健康増進科)
時間栄養学とは
最近注目されている「時間栄養学」とは体内時計に基づいた栄養学です。
これまでの「何をどれだけ」「どのように」に加えて「いつ」を考えることによって栄養学的効果が変わってきます。つまり、同じ食事でも速度や順番、時間によって身体への影響が変わり、ダイエットや生活習慣病予防に繋がると考えられます。今回は時間栄養学の観点から生活習慣病を予防する方法についてご案内します。
体内時計という存在
時計遺伝子が1日のリズムを作り出す
私たちの脳や体のほぼ全ての臓器には、1日のリズムを作り出す「体内時計」を形づくる複数の「時計遺伝子」があります。この時計遺伝子が私たちの体を地球の自転の周期である約24時間(正確には23時間56分4秒)に合わせて調整してくれます。
体内時計の1日は実際の時間よりも長い
ところが、私たちの体内時計が刻む「1日」の長さは24時間よりも少し長く、近年の研究によると24時間10分~11分との報告があります。
体内時計は1日ごとにリセットしないと実際の時間とどんどんズレていく
1日10分程度のズレでも積み重なると長時間のズレになります。
体内時計がズレたまま生活を続けると、頭と体の時計がバラバラに動き、不眠や倦怠感などの不調をきたします。また、生活リズムの乱れは血圧やホルモンに影響を与え肥満になりやすく、生活習慣病のリスクが高くなります。
体内時計のリセットのカギは光と食事!?
ズレの調整は光と食事の2つが大きく関係している
体内時計のズレを、地球の自転による1日に毎日リセットする必要があります。
1日ごとにリセットするには、まず朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びる「光の刺激」とその後1時間以内に朝食を食べる「食事の刺激」の二つの要因が関係しています。
光の刺激
朝、「光の刺激」が目の網膜から入ると、その信号が視交叉上核(しこうさじょうかく)に伝わり「朝になった」と認識します。さらに信号は内分泌器官の松果体に伝わり、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌を抑制し、脳内の体内時計をリセットします。
(メラトニンは明るい光だと分泌が抑制され、暗い光だと分泌量が増えます。)
食事の刺激
朝食を摂るという「食事の刺激」によって、全身の各臓器の体内時計がリセットされます。
時間栄養学と体内時計の関係について
夕食から朝食までの絶食時間が体内時計のリセット機能に大きな影響
前日の夕食から翌日の朝食までの絶食時間が十分だと体内時計のリセット機能が高まります。時間栄養学の観点からも、絶食時間は10時間ほどが理想的とされています。
※体内時計を正しくリセットし、生活習慣病を防ぐためにも、10時間以上の絶食時間を設けるよう心がけましょう。
十分な絶食時間を設けられない場合は
ただし、仕事の関係などどうしても夕食の時間が遅くなり、十分な絶食時間がとれないこともあります。そのような場合は「体内時計に影響しにくい食材、消化の良い食材を選ぶ」ことで体内時計を乱さないようにしたいものです。
私共のおススメの食材は、低GI食材(血糖値を上げにくい食材)です。
具体的には、穀類ではそばやパスタ・春雨・玄米などがあります。葉物野菜やブロッコリー、ピーマンなどのでんぷん質以外の野菜、たまご・肉・魚・大豆製品、食物繊維が豊富なさつまいもや海藻類、キノコ類も低GI食材です。おススメとは言え、カロリーはしっかりとあるので腹八分目を心掛けるようにしましょう。また、夕方の早い時間に主食をとり遅い時間に副食をとるといった「分食」もおススメです。
揚げ物などは控え、せめて就寝2~3時間前には終えられているように意識しましょう。
※時間栄養学以外の観点でも、夜遅い時間の食事は推奨されません。夜遅い時間の食事は、摂取したエネルギーが消費されず脂肪として蓄積されやすくなります。
まとめ
ここまでのご案内のとおり、時間栄養学の考え方を取り入れ、体内時計のリズムを適切に調整することで、健康な生活を維持することに繋がります。
まずは体内時計の存在を意識し、毎日リセットすることを心がけることからはじめましょう。
アムスでは、年に一度の人間ドックのみならず、人間ドック受診後も、年間を通じて、健康増進にお役立ていただくために、アフターフォローとして「フォロー健診コース」と「生活習慣改善コース」の二つのコースをご用意しており、希望される方に様々な方法を案内し、健康増進に取り組んでいただけるようアドバイスを行っております。
詳しくは、各クリニックまでお問い合わせください。